「何に力を入れる?」
幼稚園を⾒学にいらっしゃった⽅から、よく「聖愛幼稚園は、何に⼒を⼊れていますか?」と聞かれます。
たとえば英語とか体育とか⾏事とか美術とか⾳楽とか・・・そういう他園では教えてくれないような特別なことを教えているか、と聞かれた場合は、「実は、どこにも⼒をいれてないんです」とお答えしています。
幼稚園は、⽂科省の定めた「幼稚園教育要領」に則った教育をおこなう場所ですから、それを超える内容を教える必要はないと私は考えています。
「年齢不相応な難しいこと」ができると、我が⼦を誇らしく思うのが親⼼です。「同じ世代の⼦はまだできないのに、うちの⼦はもうできる!」と誰かに⾔いたくなる気持ちも、よく分かります。
「聖愛幼稚園に⼊ると、⼩学校に⼊る前にこんなすごいことや、あんな難しいことができちゃいます!」と⾔って園児募集をする選択肢もあったかもしれません。
でも、ケンカしたあの⼦と仲直りしたり、泣いてる⼩さい⼦の⼿を引いたり、泥だんごをピカッと光らせたり、夢中で⻤ごっこをしていたら給⾷始まっていたり、そんな幼稚園での⽇常にも、いえ、⽇常にこそ、⼦どもたちの「成⻑の種」がたくさんあるんです。地味かもしれないけれど、でも、そういう「成⻑の種」をひとつひとつ⼤切に、丁寧に育てることのできる幼稚園を⽬指すことに決めました。
「誰のための⾏事なのか」
かつて聖愛幼稚園は「⾏事の数が幼稚園の評価につながる」とばかりにたくさんの⾏事をおこなってきました。ある時、ふと「⼦どもたちは楽しめてる?(先⽣ も楽しめてる?)」と思いました。⼦どもたちの成⻑よりも、保護者を感動させることを優先していないか。先⽣たちの負担が⼤きくなり過ぎていないか。⽇常の保育よりも⾏事ばかりに気を取られていないか。
そして少しずつ、時に⼤胆に、⾏事の内容を⾒直し、改⾰してきました。
「⾃分たちが楽をしたいだけではないか?」と⾃問⾃答することも正直⾔ってありましたが、先⽣たちにゆとりが⽣まれると、⽇常の保育の質が今まで以上に良
くなっていくのが⽬に⾒えて分かりました。
時代と共に、幼稚園のあり⽅も変化しています。あれもこれもと欲張る時代は終わり、かつてフレーベルが名付けた「Kindergarten(⼦どもの庭)」そのものに収 斂していくのではと思っています。シンプルだけれど⼒強く、揺るぎない。そういう幼稚園にしていきたいと考えています。
聖愛幼稚園
園長 野口哲也